子どもの行動とサイン

ココロとからだは、つながっている

不登校1

 わたしたちのココロとからだは、つながっています。だからストレスが溜まるとからだに不具合が生じるのです。私たち大人は日々の仕事や子育て、社会の中での人間関係…で、疲労感をもったり、食欲不振だったり、体調不良などの経験を一度はしていることと思います。そのストレスをいつまでも抱えていると体調だけでなく、心まで疲弊してしまいます。悪化すれば「うつ」や「神経症」などの症状として出てくる場合があります。
 子どもも同じです。大人と同じく子どもたちの社会でも、学校生活、友人関係、家族関係において、ストレスを感じていることが多々あるのです。
 例えば、親や先生から叱られたらどうしようと思うと返事ができなったり、または「はい」と大人が気に入るような返事をしたりする行動をとる子どもがいます。しかしこの行動は、子どもにとって不快な行動を無理に行っていませんか?素直な気持ちを封印することで、どんどんストレスが溜まっていくのです。

 このように言葉と気持ちに差が生じることで、徐々に体の症状のような形として現れてきます。言葉とからだの反応が違う場合、からだの反応の方に注意してみてください。

からだが変わりに訴える(返事をする)

不登校3

 子どもが学校に行きたくないとき、「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴える話はよく耳にします。もしくは経験された方もいらっしゃるでしょう。子どもは「学校を休みたい」、「学校に行きたくない」と言ってもどうせ休ませてもらえないとか、怒られる、叱られると思いこんでいます。
 それでもどうしても休みたいときに、症状としてあらわれます。これは決して仮病ではなく、本当に具合が悪くなるのです。しかし、休めることが分かったら(=ストレスがなくなったら)、症状が改善することがほとんどなのです。
(このとき、病気のサインとして出ている場合もありますので注意深く見てください)。
ということはつまり、その症状が子どもの気持ちを代弁してくれたということになります。このように、言葉で伝えられないとき、からだが代わりに訴えてくれるということをします。それが自分を守る術でもあります。これは子どもだけでなく、大人も一緒です。

からだから発信されるメッセージ例

からだの症状訴えたいこと
お腹が痛い。頭が痛い。吐き気がする。学校に行きたくない。やりたくない。不安がある
足が一歩でない行きたくない。進みたくない。
膝を抱える自分を守る。不安がある。寂しい。
腕を交差させてうずくまる自分を守る。
硬直する感じたくない。緊張。返事をしたくない。
食べては吐く食べたいでも痩せたい。愛情が欲しい、でもうっとしい。

からだの症状と意味の目安

身体のどこが具合悪いか、そして何を言いたいのか。ひとつの目安になります。
その部位がどんなことをする場所か、ことわざ、慣用表現がヒントになりますので参考にしてください。

からだの部位症状症状の意味の目安
頭が痛い 頭を抱える考えすぎ、苦悩している etc
首が回らない返事をしたくない etc
耳が痛いもう聞きたくない etc
肩こり力、負担、責任が重い etc
腹が立つ お腹が痛い納得できない、やりたくない etc
腰が痛い踏ん張りがきかない やりたくないetc
膝が痛い一歩前に出たくない、動きたくない
負の感情がたまっている etc
背中背中が痛い背負いすぎていることから逃れたい
拒否したい etc
足・脚足が痛い 動かない前進したいか、したくないかの葛藤
進みたくない 疲労感 etc
  • 「感情」は関節や筋肉にたまるという研究も発表されています。
    ひきこもっていた子が急に運動すると、一時的ですが、それまでより疲れを感じてしまうことがあります。それは、筋肉や関節にためていた(抑え込んでいた)感情が外に出るために動き始めたからです。2,3日したら落ち着いてきます。それを繰り返しながら徐々に動けるようになっていきますので、休みながらでも身体を動かすように(からだを動かすことなら何でもOK)働きかけましょう。

表情に出る子・出ない子

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 子どもの中には、言葉での返事をしない、からだにも症状として出ない子もいます。その場合でもヒントになることはあります。それは子どもの表情です。子どもが返事をしないとき無理に答えさせるより表情に注目しましょう。
 難しいのは、無表情の子の場合です。無表情ということは、自分の気持ち・感情を一生懸命抑えているということです。それだけ自分の意見を言うことに不安を感じているということです。そういう子の場合、ときどきそっと「もう我慢しなくていいんだよ」と声をかけてあげてください。

子どものサイン

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 わたしたちは言葉を使いお互いの気持ちを話したり、聞いたりすることでコミュニケーションをしています。しかしコミュニケーションのツールは言葉だけではありません。わたしたちも「今日あの人は機嫌がよさそうだ」など、言葉を交わさずともその人の気持ちを察することを常としています。
 子どもたちは、上手く言葉で表現できないとき、髪の色や形、服装などを変えたり、いつもと違う行動をしたりすることで自己表現しているこが多々あります。それが彼らのコミュニケーションのツールの一つとなり、そこから発信されているメッセージやサインとしての重要な役割を担っているのです。

不登校8

 では、不登校やひきこもりも、ある日突然始まったのでしょうか?いいえ違います。実はその前に様々なサインを出していたはずです。後から「そういえば様子が変だった」と思い当たることがあると思います。
「なんとなく変だな、なんとなくおかしい・・・」など、実はみなさん、子どものサインをキャッチしていたのです。でも理由や根拠があいまいだから、自信を持って対応できない場合が多いのだと思います。親には過去の経験に基づいた判断があり、だからこそ親が子どもに対してなんとなく感じる心配は、後になって「やっぱりそうゆうことだったのか・・・」となるのです。

次の「?」「!」「もしかしたら・・・」と思ったときの目安になる指標を表としてまとめましたので、参考にしてください。
行動に見られるサイン
次のような行動(サイン)が見られたときに考えられる意味(メッセージ)です。
次の「?」「!」「もしかしたら・・・」と思ったときの目安になる指標を表としてまとめましたので、参考にしてください。

行動に見られるサイン

次のような行動(サイン)が見られたときに考えられる意味(メッセージ)です。

サイン考えられる意味
病気になる。ケガをする行きたくない やりたくない 関心を引きたい 注目を浴びたい
大事にされたい
頭痛考えすぎ 泣きたいのに泣けていない 寝すぎ
閉じこもる不安・恐怖 拒絶 誰にも会いたくない
黙るわからないことの表明 自信がない(怒られるかも) 怒っている
服装が変化してきた
派手になってきた
変わりたい 友だちが変わった 有名人の影響
お化粧するコンプレックスを隠す 仮面・武装 変わりたい
年齢的なもの 彼氏ができた 趣味が増えた
アイライン・つけまつげ目を大きく見せたい 誰かに目が細い等、指摘された
髪を立たせる自分を大きく見せたい 強く見せたい 威嚇したい
お風呂に入らないエネルギー切れ 何もやりたくない うつ状態
親にあたる助けてくれ! 甘えさせてくれ 自分の気持ちが伝わらない
狭いところに行く安心したい 不安・恐怖がある
盗み・万引きを働く関心を引きたい 試したい いじめの対象になっている可能性
病的なもの
夜遊びをする現実から逃げたい 自分だけの世界を持ちたい
居場所がない 独立したい 気を引きたい
食欲が落ちる悩みを抱えている 心配事がある やせたい
自分を責め、罰している
口数が減る悩みを抱えている 心配事がある どうせ自分の気持ちは伝わらない
言いたくない
部屋が散乱こころの中が荒れている 悩んでいる 余裕がない
夏でも長袖リストカット 醜形恐怖
マスク口元がイヤ 笑い顔がイヤ 顔にコンプレックスがある
話したくない
かわいらしい話し方・しぐさかわいく見られたい、容姿に自信がない、コンプレックスがある
膝を抱える不安・恐怖を感じている 守っている
ツイッターなどのSNSさびしい 人とつながっていたい 
注目をあびたい 現実から逃げたい

サインを捉えるときの注意点

以下のようなことに注意して対応しましょう。一番大切なことは慌てないことです。落ちついて対応してください。

  • 観察する
    サインとして表れたものが身体の調子が悪いのか、一時的なものかどうか、一日中だけか、数日間続いているのか、様子を見ましょう。
  • 全体的包括的に見る
    表れているサインだけに注目するのでなく、子どもの生活全般について見ましょう。
    食欲はどうか、口数はどうか、友人関係に変化はあるかなど、多角的に見ましょう。
    不登校6
  • 他の人の印象を聞く
    自分だけの思い過ごしなのか、家族や学校の先生に様子を聞き参考にしましょう。
    特に学校では、昼休みや授業と授業の間の休み時間の様子が大切です。
  • 専門家に相談する
    自分の中の不安が強い、よくわからないときは専門家に相談しましょう。
    子どもに対する自分の不安やとらえ方が整理でき、安心につながります。

※成長の一過程で出てくる場合もあります。神経質になり過ぎないようにしましょう。

子どもへの問いかけの方法

カウンセリング1

疑問を感じたら一度子どもに聞いてみましょう。そのときの聞き方は、「お母さんには○○(例.食欲が落ちている)のように見えるけど、最近何かあった?」と自分が感じていることとして聞いてみましょう。そのときに子どもがどんな表情で、どんな答え方をしたかもヒントになります。たとえば返事をせず黙ってしまう、あるいは怒りだしたときは、その可能性があります(人は急所をつかれると怒りだす傾向にあります)。
その可能性があると感じた場合は、できるだけ早くカウンセラー、学校の先生などの専門家に相談してください。身体の病気と同じで早く対応することがとても重要です。

カウンセリングの中でのサインの例

カウンセリングの中で出会ったサインの例をご紹介します。箱庭と絵画の例です。

  • 箱庭で表現した子
    ・ビル火災の屋上に人形を置く・・・取り残された自分と逃げ場がないことをサインとして表現
    ・戦争の場面を置く・・・自分の中にある大きな葛藤をサインとして表現
    ・お墓を置く・・・今の自分から新しい自分に生まれ変わりたいことをサインとして表現
  • 絵で表現した子
    ・「先生を画いて」という依頼にゴジラを画いた子・・・先生がとても怖いことをゴジラというサインで表現する

以上のように子どもたちはいろいろな形で自分の気持ちを表現します。