小学校低学年くらいまでは、遅れはあまり目立つことはなかったけれど、学年が進むごとに「読み・書き・計算」といった特定のことが上手くできなくなってきたということがありませんか。これは、限局性学習症(LD)と呼ばれ、文字の読み書きや数字の理解に関わる脳の働きが十分に発達していないことによるものです。
読字障害
読みの困難には「音読が遅い」「形の似た字を間違える」「どこで区切って読めばいいかわからない」「文字が図形に見えてしまう」などがあります。または、文字全体が、にじんで見えたり、左右逆さまに見えたり、かすんで見えたりする人もいます。
そのため読むことがつらいのです。他の子どもに読めないんだと思われるのが恥ずかしいのです。授業で本読みをさせられるのが不安なのです。
書写表出障害
書きの困難には「文字を左右逆さに書いてしまう」「漢字を部分的に間違う」「筆順が独特」「曲線の文字が上手く書けない」「字の形や大きさが整っていない」「板書ができない。メモがとれない」などがあります。
そのため、漢字ドリルが苦痛でやりたくないし、漢字テストも大嫌いなんです。お話はできるけれど、作文や日記など書くことは大変苦手です。メモが取れないから忘れ物もしてしまいがちです。
算数障害
計算の困難には「文字盤の時計が読めない」「計算に時間がかかる」「学年相応の文章問題が難しい」「単位の変換が難しい」「図形を書くのが苦手」などがあります。
したがって、買い物に行ってお金が足りるか不安なのです。友だちと何かを同じに分ける計算が苦手なんです。ゆっくりなら計算できるから、あせらせないことが大切です。
こうした困難があると、勉強がスムーズにできず、周りから「勉強する気がない」「努力していない」「いつまでも覚えようとしない」などと誤解を受けてしまい、その子にとって大きなストレスとなります。ストレスがたまると自尊心も低下していき、学校生活においていろいろなことを学ぶのが嫌いになったり、学校に行くのが嫌になったりしてきます。
LDの子たちは、勉強の時だけ困難が生じるので、学校などの教育現場と家庭でのサポートが重要になります。他の子どもよりも、勉強に時間がかかるため、自信をなくしがちです。遅いことや出来ないところだけに焦点をあてて、何度も注意をしたり、あせらせたりしないで、ゆっくりでも、「できた」ことを褒めて、自信をつけさせてあげてください。
スクールプラスでの、識字障害の指導例
ある男子高校生は、文字の形が記号のように見え、独特な書き順で漢字を書いていました。文字バランスが悪く、大きさや形も悪く枠内に書けませんでした。しかし聴力・記憶力は優れており、人の話をしっかり聞いて、耳からの情報を頼りに学習力を補っていました。当スクールで2年間、高校の学習をしながら、文字をなぞる練習、漢字の構成や意味を覚える訓練、漢字パズルなどを繰り返し行い、2年後には、スケジュール手帳に整った文字でメモをとることができ、受験にもチャレンジして、文字を書くことに対しての嫌悪感を克服することができました。
低学年では、落ち着きない子どもはたくさんいます。忘れ物をすることもあります。感情のコントロールができないこともあります。でも中学年になっても、落ち着きのなさが他の子と比べて極めて目立っていたら、ADHDを疑ってみてください。
注意欠如: | 片付けはできていますか。忘れものが多くないですか。プリントなどすぐに紛失していませんか。話しを聞いてますか。計算ミス・ケアレスミスが多くありませんか。同じ間違いを何度もしませんか。注意を持続できてますか。 |
多動性: | 授業中に席を離れていませんか。おしゃべりを一方的にしていませんか。集中力は続きますか。イライラせず順番が待てますか。機嫌が悪くなると乱暴になりませんか。 |
スクールプラスでの、ADHDの指導例
高校生BさんはADHDです。小学生時代と比べると、かなり落ち着いてはきていますが、まだ多動や注意散漫な時が多々あります。小学生の時点でご両親の早めの対応もあり、本人も自分の特性は十分理解しており、自分なりの落ち着く方法をとろうとしています。たとえば授業50分間集中するため、10分間の休み時間は好きな音楽などを聴きながら、自由に教室を歩きまわって気持ちをコントロールしています。好きなことには集中力も発揮でき、得意分野に自信を付けようと頑張っています。使ったもののかたづけや整理は忘れがちですが、軽い注意を促すだけで、すぐに行動に移せるようになりました。
多動性のある子は、中学年以上であれば、自分の状態・状況を理解して、自身で対応していけるように特性を話してあげましょう。叱かったり、きつく注意するのではなく、「こんな時はこうするんだよ」と少しずつ繰り返し教えてあげてください。また、じっと我慢できたときなど「できたこと」は褒めてあげてください。
多動だから、何もできなのではありません。活発で活動的、エネルギーがたくさんあるのであれば、運動で能力が発揮されるかもしれません、イベントなど華やかな場所で活躍できるかもしれません。
不注意が多い子であれば、しっかり身に付くまで、自分がするべきことを書き出して確認するチェックリストを活用することが有効です。スケジュール手帳やメモ帳を使って、毎日確認することを身につければ、中学・高校にいっても自分を管理できるようになります。
どちらの子どもにおいても、叱られ続けて、失敗体験として心の中に定着し、自尊心が低下しないように、早め早めの対応をしていきましょう。
早めの対応って?
注意欠如・多動症の子どもが抱える問題は、家族や学校の先生だけで解決しようとするのではなく、小児神経科などの専門医や、地域の保健センター、児童相談所などにも相談してみてください。「薬による行動改善」「環境改善」「行動療法」を3つの柱とし、お子さんに合ったサポートの方法を一緒に考えてくれます。